セーフティエステティック

平成30年度 厚生労働科学研究費補助金 研究成果

平成29年度 厚生労働科学研究費補助金 研究成果

「安心・安全なエステティック〜健康被害防止対策とサロンの衛生環境の向上〜」

平成28年度 厚生労働科学研究費補助金 研究成果

厚生労働科学研究費補助金(健康安全・危機管理対策総合研究事業)
"平成28年度 エステティックサービスにおける健康被害の実態把握及び原因の究明
及び衛生管理に関する研究 "
1.研究の目的
エステティック技術を提供する、施設(エステティックサロン)設備や施術者(エステティシャン)の営業の許可制度や公衆衛生上の法的な規制はなく、関連情報を集約、管理する公的な部署が存在しないため、その実態を把握することは困難であるとされている。
一方で、独立行政法人国民生活センターには、日本全国からエステティックによる消費者の健康被害が年間約600件報告されており、早急に健康被害の実態を把握し、その防止策の立案が求められている。そこで本研究は、これらの健康被害防止と施設の衛生環境が向上することを目的として、健康被害の原因究明への協力を医療機関へ要請し実態調査を続ける。被施術者に対する安全性確保の手段として利用者背景を探ること、施設や施術者の衛生環境調査を続け啓発教育を提案する。衛生管理教育の実態調査として意識改革を図ることなどを具体的な目標として研究を進める。

2.研究結果の概要
・エステティックにおける健康被害の実態調査
@独立行政法人国民生活センター(PIO-NET)エステティックサービス 危害
国民生活センターでは、全国の都道府県市町村の消費者相談窓口に寄せられた消費者相談のうち「エステティック」のカテゴリーの危害情報を収集した。その結果、平成27年4月1日〜平成28年3月31日の間で549件が報告されていた。 商品キーワード

危害の内容では、皮膚障害(36.6%)が一番多く、次いで熱傷(19.1%)だった。皮膚障害は、美顔エステが一番多く、熱傷は、脱毛エステが多かった。

危害の内容

A医療機関対象アンケート調査(エステティック健康被害症例の収集)
日本美容皮膚科学会会員が所属する医療機関166施設から有効な回答を得、エステティックによる健康被害の治療経験があった77施設から155件の症例を収集した。
治療を受けた患者の属性は、女性が146件(94.2%) 年代層は20歳代が49件(31.6%)30歳代が39件(25.2%)と20歳から30歳代で56.8%を占めた。

所見では、熱傷が多く56件(36.1%)ついで、接触皮膚炎が43件(27.7%) 色素沈着23件(14.8%)だった。

所見

熱傷の原因として挙げられていたのは、光を利用した脱毛とラジオ波、接触皮膚炎では、オーガニック化粧品やアロマオイルが目立った。

熱傷の原因

接触皮膚炎の原因

健康被害の原因

・エステティック利用者背景調査
@エステティック営業施設利用者が持つアレルギーや疾患等に関する調査結果(利用者対象)
(エステティック施術の安全性向上のためのアンケート調査)

健康被害の原因
エステティック11施設の利用者106名から回答を得た。ストレスや身体疲労があるとの回答がどちらも70%以上だった。体質や既往症については、アレルギーあり63.2% 疾患あり16.0%だった。

ストレスや身体疲労の状態|体質・既往症等の有無

アレルギーありの内訳は、花粉症が58.2% アトピーが20.9%だった。化粧品17.9% 光線過敏7.5%などエステティックの施術内容によってはリスク要因となるものもあった。

健康被害の原因

皮膚の自己評価は、約半数が「カサカサしやすい」「冷えやすい」との回答があるなど不調を訴えていた。

皮膚の自己評価

Aエステティック営業施設利用者が持つアレルギーや疾患等に関する調査結果(営業施設対象)
一方、営業施設へのアンケートでは、アレルギーを持つことを申告した消費者が半数以上を占めた。

顧客のアレルギーの申告を受けた経験

これらの調査結果から、エステティック営業施設にはアレルギーなどの過敏性要素を持つ顧客が相当数いることが分かり、健常人では問題のない施術でもこれらの利用者では健康被害のリスクが高まっている状況が推察された。また、利用者の7割が身体疲労やストレスを感じていることから健常人であっても体調が下降気味であることがうかがえた。今後、慢性疾患やアレルギーなど健常人より健康被害のリスクが高い利用者が癒しを求めてエステティックを受ける場合が増える可能性があり、施術者教育として利用者の心身の状況を把握できる効率的な聞き取り方法と脆弱皮膚の扱い方に関する基礎知識が得られるように施術者教育を充実していく必要がある。

・機器及び手技、化粧品等の安全性調査
@フェイシャルスキンケアの皮膚に対する影響試験

昨年度に引き続き、フェイシャルの手技が皮膚に与える影響について、健常女性12名(平均年齢44.9歳の被験者にエステティック業界の民間資格を有する技術者2名が施術を提供し、検証を行った。さらに、今回は、施術を提供する技術者の経験年数 1名が20年以上 1名1年未満で行い、技術者の熟練度によって皮膚への影響の比較を試みた。
検証は、皮膚状態に変化があるかどうかを施術前後の角層水分量、水分蒸散量、真皮水分量の測定を行った。
その結果、被験者12名 施術前後の医師の診察、角層水分量、水分蒸散量、真皮水分量、全て問題となる事象はなかった。
技術者の熟練度の差による皮膚への影響については、有害事象につながる兆候は見られなかった。

角層水分量(右頬)被験者全員

水分蒸散量(左頬)被験者全員

真皮水分量(頬)被験者全員

施術者の手指細菌調査
昨年度と同様技術者の手を介した細菌類の伝播について調査を行った。さらに、施術者の熟練度による差(実務経験20年以上の技術者と1年未満の技術者)で比較検討したところ、感染媒介という点では有意な差は見られなかった。
施術者どちらともに施術前後で、菌数が2〜10倍に増加(+)増加分の菌数は被験者由来のものと考えられた。

技術者の手指最近調査

ARF機器皮膚安全性試験
エステティック営業施設では、痩身やむくみの改善を目的としてラジオ波を利用している。しかし、ラジオ波を原因とする熱傷の被害が報告されていることから、今回エステティックで使用されているラジオ波を使用している機器が皮膚に与える影響(皮膚表面温度、皮膚生理機能)について測定し安全性を検討した。機器ABでサーモグラフィの動画より施術を行った大腿を上中下(abc点)と3分割し各の範囲で施術中の最高温地点の10秒ごとの温度変化を抽出した。

その結果、施術前後で角層水分量、水分蒸散量ともに異常は見られなかった。皮膚表面温度は、50度近くまで上昇するケースがみられた。皮膚表面温度50℃は3分間の圧迫で細胞変性が誘導される温度である(日本熱傷学会 報告より)。エステティックで使用されるRF機器は、一般的に施術部位を一定以上の速度で移動させることにより急激な温度上昇を防いでいるが、移動速度が遅い場合や反復して同じ個所を通過すると予想以上に温度が上昇し、熱傷につながるおそれがある。しかし、今回使用した機器の機器Aでの表面温度の上昇に関しては、何らかの理由で電極と皮膚の間の接触抵抗が高くなり、予想以上の発熱を生じた可能性もあり機器の安全性に関しても疑問が生じる。また、 取扱説明書における「一定の速度」がどのくらいかなどの注意喚起は十分ではなく、施術者への十分な教育が望まれる。RF機器は現在エステティックサロンで数千台稼働しているといわれており、今回の試験対象機器以外の実態は不明だが、健康被害防止の観点から、すべての機器に通常の使用方法や施術上の注意点を取扱説明書や機器本体などに明確に表記し、また、事故が起こらないような施術者への教育制度を作ることが急務と考える。

被験者3(機器A)

・衛生管理状況に関するアンケート調査

エステティック284施設から有効な回答を得た。エステティック専門店(173件60.9%) 化粧品店と併設32件(11.3%)だった。提供しているサービスは、複数行っているケースが多く、フェイシャルエステティックが274件(98.2%) ボディエステティック209件(74.9%)だった。
衛生管理に必要な21項目については、21項目すべてを実施していたのが17件(6.0%) 80%に当たる17項目〜20項目を実施していたのは115件(40.5%)だった。平成25年度に実施した同様の調査との比較では、17〜20項目で10.6%増加していた。
それぞれの項目では、器具類の消毒は概ね90%が実施していると回答しているが、勉強会やチェックシートの実施率は低かった。平成25年度に行った同様の調査との比較では、「衛生管理責任者を決めている」が13.3%増 「衛生管理のマニュアルがある」が15.6%増と、全体をコントロールする項目で増加が見られた。

被験者4(機器B)

3.まとめ
エステティック施術は本来心身が健康な人に手技、化粧品、機器を使用して施術を提供するものであるが、利用者背景については規制がなく種々の目的で多くの人が利用する可能性がある。施術の組み合わせは、施設によりきめられた工程で進行することが予想され、顧客の状況や条件で変更する技量が施術者に備わっているかどうか疑問である。既に報告したとおり施術による健康被害は、皮膚障害、熱傷が主であるが、原因究明がなされることは難しい。
平成28年度の研究では、国民生活センターの危害情報及び皮膚科医師のアンケートにおいて健康被害は、皮膚障害、熱傷が主であることは変わらなかった。皮膚科医師のアンケートから、エステティックの健康被害で受診した患者の原因として、光を利用した脱毛、オーガニック化粧品、ラジオ波があげられた。ラジオ波とは、電磁波の一種で30KHz~300MHzの周波数で、人体に流すことにより熱に変換される。今年度はラジオ波の安全性試験を行ったが、2機種の内1機種で1例発赤を認めるなど使用方法を誤ると健康被害のおそれがあることが分かった。エステティック営業施設対象のアンケートでは、施設で使用している機器として光を利用した脱毛21.5%ラジオ波32.3%だった。利用者背景の調査では、利用者の理解を得るのに時間がかかり今年度収集できたサンプル数は少ないが、利用者の半数以上がアレルギーの既往を持ち、約2割で高血圧や糖尿病などの既往があった。
衛生学的調査では、昨年と同様技術者の手を介した細菌類の伝播について調査を行ったが、施術者の技能差(実務経験20年以上と1年未満)で比較検討したところ、感染媒介という点では有意な差は見られなかった。エステティック営業施設の衛生管理状況に関する調査では、衛生管理に必要な21項目の実施状況において平成25年度に行った同様の調査との比較では、「衛生管理マニュアルがある」などをはじめ全体的に「実施」が微増していた。また、手洗いについては、手洗いにかける時間が短めであり消毒剤の使用も半数以下にとどまり、十分な手洗いができているか疑問が残った。昨年度作成した正しい手洗いを示した補助教材については、「手洗い手順のイラストが小さい」「施術前後の細菌付着状況の写真の解説が必要」などの意見を踏まえたうえで新たな情報を付け加えることなど改善を検討している。

平成27年度 厚生労働科学研究費補助金 研究成果

「エステティックの施術による身体への危害についての原因究明及び衛生管理に関する研究」
pdf 研究成果
pdf 衛生管理は手洗いから」

平成26年度 厚生労働科学研究費補助金 研究成果


平成25年度 厚生労働科学研究費補助金 研究成果

「エステティックの施術による身体への危害についての原因究明及び衛生管理に関する研究」
pdf 研究成果

平成22〜24年度 厚生労働科学研究費補助金 研究成果

「エステティックにおけるフェイシャルスキンケア技術の実態把握及び身体への影響についての調査研究」研究成果

◆ エステティックサロンの衛生管理の充実について

◆ フェイシャルスキンケアに関する健康被害の実態について
 (独立行政法人国民生活センター PIO-NETより)

◆ フェイシャルスキンケアの身体への影響について(準備中)

◆ 施術用化粧品及び施術用機器の安全性について(準備中)

◆ 厚生労働省厚生労働科学研究費補助金≪健康安全・危機管理対策総合研究事業≫(準備中)
 「エステティックにおけるフェイシャルスキンケア技術の実態把握及び身体への影響についての調査研究」報告書